私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
6章:勝手な男
―――修は勝手だ。勝手すぎる。
その日は、朝早くからの会議でもう栗山先生は大学に来ていて、私が出勤した時には会議に出た後だった。
私が研究室に出勤してすぐ、鈴鹿紫教授が研究室に入ってくる。
鈴鹿先生は50歳をとっくに過ぎているらしいが、そうは見えない。
どう見ても40歳くらいで、下手すれば30代にまで見える。
しかももう独立したお子さんも3人いるという母親で、旦那さんもうちの大学の研究者で教授だ。
なのに全く偉ぶった態度もなく、私みたいなバイトにも優しくて、私は心底、鈴鹿教授を尊敬していた。
そんな鈴鹿先生は、今日まで出張で一週間留守だったのだ。
「おはよう、くるみちゃん。長く留守にしてごめんね」
「いえ、大丈夫です。特に問題はありませんでした」
「あらぁ、何その顔! 栗山先生に何かされた?」
両頬をぶにっと挟まれ、鈴鹿先生の方を向かされる。
先ほどトイレでも確認したけど、今朝の一件でまだ目が赤いようだ。
「な、なんで栗山先生ですか? 違います」
「そう。ならどうしたの?」
「いや……」
私が口ごもると、言ってみなさい、と優しい声が降ってくる。
さすが3児を育て切った母……その優しい声に思わず何でも言ってしまいそうになる。