私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
7章:背中
涙を拭いてそっと研究室に戻ると、鈴鹿先生が私の両手を握った。
「本当におめでとう!」
「ち、ちがうんですぅ……!」
「あら、マリッジブルーね! わかるわぁ。私も経験あるもの」
「違いますぅうううう!」
(勝手に同じ経験にしないでください! 全然違うんですっ!)
泣いて告げても、鈴鹿先生は全く信じている顔をしてくれない。
それどころか、
「何が不満よぅ。ちょっと……腹の中は真っ黒だけど、腕はいいし、研究者としても成功してる先生よ?」と微笑む。
「私はそんな腹黒そうな成功者より、優しくて、普通の男の人がいいんですぅううううう……! っていうか、そもそも恋愛したくないし、結婚なんてもっとしたくありません」
「どうして? 押し付けるつもりはないけど、私は結婚して良かったと思ってるわよ?」
「それは……」
結婚はしたくはないけど、今でも憧れはある。
だって20歳のあの時までは……ずっと修と恋愛して結婚するものだと思っていたから。
私が黙り込むと、先生は優しく微笑む。
「それに、あんな楽しそうな顔の猪沢くんはじめて見たし。くるみちゃんのことがよっぽど好きなのねぇ」
「あれは私をいじめるのが好きなだけですよ……」
そうだ。
修は、私が騙されて翻弄されるのを、ただ楽しんで見ているだけだ。