君と、サヨナラの恋

こ、れ……。

胸に手があたってるとかのレベルではなくて、確実に揉まれてますよね……。

全身硬直して青ざめるあたしの耳元で、梶谷くんが吹き出す。


「何、その声。有希(ゆき)、お前今日変じゃね?」

有希……?

彼が読んだ名前に、妙な違和感を覚えたのはほんの一瞬。

あたしの左胸に触ったまま、梶谷くんがもう片方の手であたしの顎をつかんで後ろを振り向かせる。

よくわからないけれど、とにかくめちゃくちゃ身の危険を感じたあたしは必死で梶谷くんを押しのけようとした。


「ちょ、や、め……」

なんとか声を張り上げようとするのだけど、想定外の状況が思った以上にあたしを怯えさせていて。うまく声が出ない。


「おい、有希。なんだよ、暴れんなって」

どうやら別の女の子と勘違いしているらしい梶谷くんが、震える手足でジタバタとするあたしを押さえつけようとする。

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