君と、サヨナラの恋
窓の向こうに目を向けると、陸上部の部員たちが校庭のトラックを走っている姿が見えた。
校庭では他にもサッカー部やラグビー部や野球部なんかが練習をしているのに、あたしの視線は陸上部の、それも特定のただ一人に注がれる。
ずっと彼のことを見てきすぎたせいか、あたしの目はどんな時でも彼のことを正確に視野に捉えられるようになっていた。
幼なじみの平岩 悠真。
あたしは、彼が走っている姿を見るのが一番好きだ。
その姿をぼんやりと眺めていると、やがて練習が終わったのか悠真がゆっくりと走るのをやめた。
手首で額の汗を拭う彼のもとへ、ジャージ姿の女子が歩み寄っていく。
彼女が悠真に笑いかけながらペットボトルの水を渡すのが見えて、それまで胸の中にあったほわほわとした温かな気持ちが一気に冷えた。
悠真が彼女に見せる表情が遠目にもはっきりとわかって、予想以上にショックを受ける。
悠真のそばでいつも笑いかけてもらえるのは、いつの頃からかあたしだけの特権だと思ってた。
どうしてそんなふうに思えていたんだろう。
あたしは悠真にとって、恋愛対象なんかじゃなかったのに。