君と、サヨナラの恋
「え?」
梶谷くん……?
陽だまりの中で気持ちよさそうに眠っているその人の姿を見つめて、何度も瞬きをする。
そこにいたのは、同じクラスの梶谷廉だった。
梶谷くんは女子たちの話題によく上ってくる、学年でもクラスでもかっこいいと評判の男子だ。
授業中は気だるげで、居眠りばかりしていて、よく先生に注意されているけど、同世代からの人望はあるらしく……。休み時間中の彼の周りは、いつも賑やかだ。
うちのクラスにもうひとりいる女子人気の高い男子、久我山律季と仲が良いみたいで、ふたりを中心に男子たちが集まっては、いつもバカみたいに騒いでる。
バスケ部に所属しているとかで、普段の見た目は軽そうなんだけど、バスケをやってるときはまるで別人みたいに真剣な顔になるところがかっこいいらしい。見たことないからよく知らないけど。
あたしと同じ仲良しグループのレミは、イケメン大好きでミーハーだから、「梶谷くんがかっこいい」と2年に上がった新学期からずっと騒いでて。
毎朝、『梶谷くんに挨拶しようキャンペーン』をひとりで実施している。
話しかけたらまず絶対に笑顔で挨拶を返してくれるらしくて、成功した日の朝は、レミのテンションがすごく高い。
だけど、あたし自身は彼と全く関わりがない。
クラスメートだけど、挨拶すら交わしたことがないかもしれない。