君と、サヨナラの恋

だって、全然違う。

そう思いながら、あたしは胸の中で別の男の子の顔を思い浮かべていた。

もし仮に、本当に梶谷くんが噂の『失恋の神様』だったとして。

噂どおり、本当に全部忘れさせてくれるなんてことあり得るのかな……。

しばらく深く考え込んだのちに、思い直して小さく首を横に振る。

いや、やっぱりあり得ない。

ただのクラスメートの梶谷くんが『神様』なんて。

うわさで聞いたの『失恋の神様』がいて欲しいっていうのは、彼をなかなか忘れることができないあたしの悲痛な願望。

そんなもの現実にはいないってわかってるし、もしそんな神様がいたとしても、あたしの気持ちはそう簡単に忘れられるほど軽くはない。

信憑性のないうわさに本気で縋ろうとするなんて。あたしも大概だ。
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