君と、サヨナラの恋
隙間風のストレスがなくなったからか、不快そうに寄せられていた眉間が緩んでいる。
何気なく窓のほうに視線を戻してほっと息を吐いたとき、練習を再開させた悠真の姿が見えた。
真っ直ぐに前だけを見つめて疾走する、悠真の横顔がとても綺麗だ。
「んぁ? お前、来てたなら起こせよな」
自分がどこにいるのかも忘れてしまうくらい悠真に釘付けになっていたら、突然背後から乱暴に引っ張られた。
弾力のある柔らかなものの上に尻もちをついた瞬間、首の後ろを生温い風が掠める。
結ばずに下ろしていた後ろ髪がそっと優しく肩の方に流されたかと思うと、やや湿り気のある柔らかな感触の何かが頸にあたる。
「呼び出しといて遅ぇよ。持て余してうっかり寝てたわ。部活出そびれたし。待たせた分の対価はきっちり払えよな」
ゾクリと背筋を震わせたあたしの耳元で、男の子の気怠げな低い声がした。
この声、梶谷くん……だよね?
そう思っているうちにお腹の前にすっと二本の腕が回ってきて、さらにそのうちの片方の手があたしの左胸に触れた。
制服の上から胸を包んだ指の長い大きな手が、そのまま妙な動きを始めて「ひっ……」と声にならない悲鳴が漏れる。