僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
 で――。存外呆気なく――。僕と葵咲(きさき)ちゃんの交際は認められた。

 というか……。

「え? あなたたち、付き合ってたんじゃなかったの?」
 と全員一致で驚かれた。

 元々きみと葵咲は血の繋がりがあるわけじゃないし、葵咲の態度を見ていれば理人(りひと)くんに惹かれているの、丸分かりだったよ。

 葵咲ちゃんのお父さんが、笑いながらそう言った。

 理人くんが怪我して病院に運ばれた時、この子ったらもう取り乱しちゃって大変だったのよ~。あんまり動転してるから気が済むまで付いててあげなさいって背中押したのよ。
 あ、言うの、遅くなっちゃったけど、あの時は娘を守ってくれて本当にありがとう。理人くんが元気になってくれて良かった。おばさん、理人くんのお母さんに合わせる顔がなくなるかと思ったのよ。
 でもね、そんな理人くんだから……おばあちゃんと二人で、貴方になら葵咲を任せても大丈夫っていつも話してたのよ。

 そう言って笑ったのは葵咲ちゃんのお母さんで――。

 せっかくだからデートしてきなさいな。このところ理人くん、忙しくてずっと会えんかったんでしょう?

 おばあちゃんの提案で、僕らは丸山家のみんなに後押しされて――というか半ば追い出されるように――外に出された。

「〝理人くんなら大丈夫〟ってそういう意味だったんだね」

 葵咲ちゃんがそういって恥ずかしそうに笑った。

 僕も、まさかあの言葉にそんな意味があるなんて思っていなくて正直驚かされた。
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