僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
***
僕の実家でも、やはり僕たちはとっくに付き合っているものと思われていた。
僕が怪我をしたとき、僕の傍を離れようとしなかった葵咲ちゃんを見て、母は僕らを兄妹みたいにして育ったから、と言ったけれど、あれも良く聞いてみれば「幼い頃からとても仲の良い二人で微笑ましい」というのを表現したつもりみたいで。
(分かり辛いって!)
僕はあの時、母の言葉に違和感を感じたのをよく覚えている。僕と葵咲ちゃんは断じて兄妹などではないし、そういう風に思われるのも心外だ、と――。
どうやら僕も葵咲ちゃんも、空回りをしていたみたいだ。
案外親たちのほうが、当事者より客観的な目で見て、本質を見抜いていたのかも知れない。
そのことに気がついた僕たちは、
「理人、葵咲ちゃん、せっかくだし、夕飯食べていくでしょう?」
という母の誘いを丁重に断って、そそくさと僕の実家を後にした。
僕は、一刻も早く葵咲ちゃんと二人きりになりたかったんだ。その気持ちは、葵咲ちゃんも一緒だったみたいで。
車に乗り込んで、どちらからともなく「どこに行こう?」と口にしながらも、心の中では行き先なんてひとつしかなくて――。
「――僕ん家、来る?」
僕の実家でも、やはり僕たちはとっくに付き合っているものと思われていた。
僕が怪我をしたとき、僕の傍を離れようとしなかった葵咲ちゃんを見て、母は僕らを兄妹みたいにして育ったから、と言ったけれど、あれも良く聞いてみれば「幼い頃からとても仲の良い二人で微笑ましい」というのを表現したつもりみたいで。
(分かり辛いって!)
僕はあの時、母の言葉に違和感を感じたのをよく覚えている。僕と葵咲ちゃんは断じて兄妹などではないし、そういう風に思われるのも心外だ、と――。
どうやら僕も葵咲ちゃんも、空回りをしていたみたいだ。
案外親たちのほうが、当事者より客観的な目で見て、本質を見抜いていたのかも知れない。
そのことに気がついた僕たちは、
「理人、葵咲ちゃん、せっかくだし、夕飯食べていくでしょう?」
という母の誘いを丁重に断って、そそくさと僕の実家を後にした。
僕は、一刻も早く葵咲ちゃんと二人きりになりたかったんだ。その気持ちは、葵咲ちゃんも一緒だったみたいで。
車に乗り込んで、どちらからともなく「どこに行こう?」と口にしながらも、心の中では行き先なんてひとつしかなくて――。
「――僕ん家、来る?」