僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
本編
あれは、ある暑い夏の日の夕暮れ時。その日は、じっとしていても汗ばむような、嫌な熱とねっとりとした湿度を持った日だった。
余りに身体がベタベタして気持ち悪かったので、葵咲はシャワーで軽く汗を流してから、そそくさとお気に入りの白のワンピースに身を包んだ。
近所に住む理人が、高校受験を控えていた年のこと。
夏休みなのに学校で補修があるとかで、会える日が極端に減ってしまっていた。いつも一緒にいるのが当たり前だった兄が、急に遠くへ行ってしまったみたいで、小四の葵咲は寂しかったのだ。
学校に行けば友達はたくさんいたけれど、今は夏休み。
校区の端っこの方に住んでいる葵咲には、理人が全てだった。
ふと時計を見やるとちょうど今し方、16時を回ったばかりだった。夕飯までにはまだ時間がある。
(せっかく可愛いワンピースに着替えたんだもん)
葵咲はふと思い立って、池本家に突撃することにした。
母親同士が仲がいいこともあり、幼い頃から割と気軽に理人の家に行っていた。
その気軽さも後押しして、今日は理人の顔を見て、嫌味のひとつでも言ったら、無理にでもワンピース姿を褒めてもらって……それからすぐにお暇しようと思ったのだ。
余りに身体がベタベタして気持ち悪かったので、葵咲はシャワーで軽く汗を流してから、そそくさとお気に入りの白のワンピースに身を包んだ。
近所に住む理人が、高校受験を控えていた年のこと。
夏休みなのに学校で補修があるとかで、会える日が極端に減ってしまっていた。いつも一緒にいるのが当たり前だった兄が、急に遠くへ行ってしまったみたいで、小四の葵咲は寂しかったのだ。
学校に行けば友達はたくさんいたけれど、今は夏休み。
校区の端っこの方に住んでいる葵咲には、理人が全てだった。
ふと時計を見やるとちょうど今し方、16時を回ったばかりだった。夕飯までにはまだ時間がある。
(せっかく可愛いワンピースに着替えたんだもん)
葵咲はふと思い立って、池本家に突撃することにした。
母親同士が仲がいいこともあり、幼い頃から割と気軽に理人の家に行っていた。
その気軽さも後押しして、今日は理人の顔を見て、嫌味のひとつでも言ったら、無理にでもワンピース姿を褒めてもらって……それからすぐにお暇しようと思ったのだ。