僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
僕は、かなりの運と、そしてある種の執念に助けられて、今、この座を勝ち取れたのだと自負している。
伊達に一年余分に費やして、葵咲ちゃんの後を追ってここへ来たわけではないと言うことだ。
僕が勤めることになったここは、一大学が有するにしてはとても規模の大きな図書館だった。その上、もともと閉架式の図書館だったものを開架式にした関係で、とても特殊な造りになっているのにも興味をそそられた。
七階建ての大きな煉瓦造りの建物全体が図書館なのだが、おもしろいのは受付カウンターが一階ではなく最上階にあること。これこそが、まさしくここが閉架式の図書館だった名残なのだ。
かつては、七階の受付で蔵書の目録を頼りに目当ての資料を選んだ学生たち。彼らに応じる形で司書たちが書庫に降りて、手ずから要求された本を取ってきて学生らに手渡していたんだと思う。
国内で有名なものだと、国立国会図書館がそのやり方だ。
それが、年月を経て必要に迫られて開架式に変わったんだろう。大掛かりな工事は行わず、部分的にいじっただけで開架式の体裁を整えたんだろうこの図書館は、書庫へ降りるための階段と、大型エレベーター――大量に資料を運ぶ役割も担うため――が、閉架式の時の名残で受付のすぐ側にある。
恐らく、かつてはそれらの入り口も含めて受付のカウンター内だったはずだ。
それらからは各階――書庫――に降りることが可能だが、降りた先では館内からも、最上階のエントランス以外からは外に出ることは敵わない造りになっている。