僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
Prologue
  「理」と言う文字は、物事の道理やことわりという意味を持つ。

 僕の名前の理人(りひと)には、きっと両親からの真っ直ぐな人たれ、という願いが込められている。

 有り難い事に、容姿にはずば抜けて恵まれたと思う。子供の頃からやたらとモテたし、今でも事あるごとに女性から熱い視線を送られるからだ。

 ただし僕を好いてくれるのは、僕と話したことがない人に限られる。

 学生の頃はコンパなどにもよく駆り出されたが、友人らの敵になって僕の一人勝ちになるかといえばそんなことは微塵もなく……。むしろ、僕が口を開けば女の子たちが引くことをよく知っている悪友たちからは、客寄せパンダ的な存在としてやたらと重宝がられたくらいだ。

 自分では別に変なことを言っているつもりはなかったし、もちろん声が変だとかそういうわけでもない。逆に声だけで女性をイかせられる自信だってある。

 ただ、残念ながら僕は異性に興味を持てない。いや、興味を持てないと言うのは語弊(ごへい)があるな。
 実はこう見えて、僕はとっても一途(いちず)なのだ。

 そう、あれは今から十四年前。僕が小学六年生になったばかりの頃に(さかのぼ)る。
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