僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
 十八時半(ろくじはん)を過ぎたところで利用者もはけ、館内は僕だけになった。

 いつもそんな感じなので、このまま葵咲(きさき)ちゃん以外の人が誰も来ませんように、と願う。

 バイトの二人が帰ってからは、ワンマン体制なので書庫や事務所には入らず、久々にカウンター内で仕事をした。と、静かな館内に、エレベーターが上がってくる気配がした。

 しん……と静まり返った中、微かなモーター音が聞こえる。

 後ろを振り返って時計を確認すると、十八時五五分。

 おそらく葵咲ちゃんだ。

 僕はエレベーターの入り口を見つめながら背筋を正した。

 ヤバイ。物凄く緊張する。
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