僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
きみを守りたい
「……ッ。――っ! ひとっ!」
耳元で、葵咲ちゃんの声が聞こえる。
停電してしまったのか、真っ暗闇で何も見えない。
「理人!!」
不意に頬を包み込む温かい感触がして、僕の意識は急速に浮上する。
気絶してる場合じゃないっ!
今にも泣きだしそうな彼女の声を聞いて、僕はゆっくり瞼を開いた。停電していたと思ったのは錯覚で、電気はちゃんとついていた。
シャットダウンしていたのは僕の方だったか。
「泣かないで……」
唇の上に彼女の瞳からこぼれ落ちた涙の雫が触れて、僕はゆるゆると葵咲ちゃんの頬に手を伸ばした。
意思に反して身体がやけに重たい。それに夏も近いというのにおかしい。なんかちょっと寒いかも……。服も何故か濡れているみたいだし。って、あれ? この階に水道なんてあったっけ?
ぼんやりとした頭で色々考える。
まだよく状況が飲み込めないけど、ひとつだけ確かなことがあった。目の前で葵咲ちゃんが泣いている。それだけで、僕はしっかりしないと!と思えた。
「……大、丈夫、だから」
こんな力ない声で大丈夫なんて言われても説得力がないよね。頑張れ僕。腹から声を出せ!
とりあえず現状を把握したくて身体を起こそうとしたら、葵咲ちゃんに押さえ付けられた。
「動かないで! 理人、頭からすごい血が出てるのっ」
泣きながら必死に僕の頭の傷を押さえる葵咲ちゃんに、ああ、だから身体が濡れて気持ち悪かったのか、と今更のように得心する。
「私、バッグにスマホ入ってるっ……」
言いながら、書架の下敷きになっているトートバッグを懸命に引っ張る葵咲ちゃん。
でもここ、電波が来てないんだ。教えてあげないと。
耳元で、葵咲ちゃんの声が聞こえる。
停電してしまったのか、真っ暗闇で何も見えない。
「理人!!」
不意に頬を包み込む温かい感触がして、僕の意識は急速に浮上する。
気絶してる場合じゃないっ!
今にも泣きだしそうな彼女の声を聞いて、僕はゆっくり瞼を開いた。停電していたと思ったのは錯覚で、電気はちゃんとついていた。
シャットダウンしていたのは僕の方だったか。
「泣かないで……」
唇の上に彼女の瞳からこぼれ落ちた涙の雫が触れて、僕はゆるゆると葵咲ちゃんの頬に手を伸ばした。
意思に反して身体がやけに重たい。それに夏も近いというのにおかしい。なんかちょっと寒いかも……。服も何故か濡れているみたいだし。って、あれ? この階に水道なんてあったっけ?
ぼんやりとした頭で色々考える。
まだよく状況が飲み込めないけど、ひとつだけ確かなことがあった。目の前で葵咲ちゃんが泣いている。それだけで、僕はしっかりしないと!と思えた。
「……大、丈夫、だから」
こんな力ない声で大丈夫なんて言われても説得力がないよね。頑張れ僕。腹から声を出せ!
とりあえず現状を把握したくて身体を起こそうとしたら、葵咲ちゃんに押さえ付けられた。
「動かないで! 理人、頭からすごい血が出てるのっ」
泣きながら必死に僕の頭の傷を押さえる葵咲ちゃんに、ああ、だから身体が濡れて気持ち悪かったのか、と今更のように得心する。
「私、バッグにスマホ入ってるっ……」
言いながら、書架の下敷きになっているトートバッグを懸命に引っ張る葵咲ちゃん。
でもここ、電波が来てないんだ。教えてあげないと。