僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
肝心な退院当日、葵咲ちゃんよりも先に僕に会いに来たのは大学の学園長だった。
彼は「池本さん、お怪我までされているのに大変恐縮なんですが」と前置きしつつ、それでもそのあとに切々と語られたのは地震後の大学図書館の惨状と、「だからなるべく早く復旧に当たってほしい」と、そういう話だった。
大学から給料を貰っている身としては、雇い主から直々にこんな風に言われてしまっては断れようはずもない――。
一職員の、しかも入院先の病院にまで来るくらいなのだから、学園長の困窮ぶりも窺えるし。
実はあの地震の日以来、僕のスマホは行方不明のままだった。
単に電話しても繋がらないから、業を煮やして会いに来ざるを得なかっただけかもしれないのだけれど。
そんな事を寸の間逡巡して、僕は迷いつつも「一旦自宅に戻ったあとになりますが」と前置きをしてから、後ほど図書館に向かう旨を確約してしまった。
しながら、何してんだ僕は……と思った。
彼は「池本さん、お怪我までされているのに大変恐縮なんですが」と前置きしつつ、それでもそのあとに切々と語られたのは地震後の大学図書館の惨状と、「だからなるべく早く復旧に当たってほしい」と、そういう話だった。
大学から給料を貰っている身としては、雇い主から直々にこんな風に言われてしまっては断れようはずもない――。
一職員の、しかも入院先の病院にまで来るくらいなのだから、学園長の困窮ぶりも窺えるし。
実はあの地震の日以来、僕のスマホは行方不明のままだった。
単に電話しても繋がらないから、業を煮やして会いに来ざるを得なかっただけかもしれないのだけれど。
そんな事を寸の間逡巡して、僕は迷いつつも「一旦自宅に戻ったあとになりますが」と前置きをしてから、後ほど図書館に向かう旨を確約してしまった。
しながら、何してんだ僕は……と思った。