僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
「あのさ、ファミレスじゃダメ……かな?」
まだ夕飯も食べてないし、と付け加えてみる。
近くでこの時間に割と気軽に入れるところ。しかも彼女の貞操が危うくなる個室ではなくて……居酒屋でもないところ……。消去法で考えていくと、そこしか浮かばなかった。
「アリア?」
僕の問いかけに、初めて葵咲ちゃんが返してくれた。
「うん。――どうかな?」
葵咲ちゃんが名を挙げたアリアは、一応ファミレスだけどドリンクバーなどがないからか、店全体の雰囲気がとても落ち着いていて、どこかガチャガチャした印象の、他の同系店とは一線を画した店だった。その割には値段も手頃だし、何より店員の質が良くて僕は気に入っている。
けど、ファミレス、と告げただけで、彼女の口からその名が出たのには驚いた。
「理人もアリア派? 私もファミレス行くならあそこって決めてるの」
そこでふと何かを思い出したみたいな葵咲ちゃんは、一瞬ムッとした顔をしてから、まるでそれを振り払うみたいにニコッと笑みを浮かべた。
「それにあそこの店員さん、みんなかっこいいし」
次いで、さらりと継がれた言葉に、僕は思わず歩みを止める。急に立ち止まった僕の背中に、葵咲ちゃんがぶつかったけれど、ごめん、という言葉が出てこないくらい、僕にとって彼女の言葉はショッキングで。
もしかしたら、さっき僕が意地悪をした意趣返しだろうか? それにしたって、その言葉は聞き捨てならないんだけど。
まだ夕飯も食べてないし、と付け加えてみる。
近くでこの時間に割と気軽に入れるところ。しかも彼女の貞操が危うくなる個室ではなくて……居酒屋でもないところ……。消去法で考えていくと、そこしか浮かばなかった。
「アリア?」
僕の問いかけに、初めて葵咲ちゃんが返してくれた。
「うん。――どうかな?」
葵咲ちゃんが名を挙げたアリアは、一応ファミレスだけどドリンクバーなどがないからか、店全体の雰囲気がとても落ち着いていて、どこかガチャガチャした印象の、他の同系店とは一線を画した店だった。その割には値段も手頃だし、何より店員の質が良くて僕は気に入っている。
けど、ファミレス、と告げただけで、彼女の口からその名が出たのには驚いた。
「理人もアリア派? 私もファミレス行くならあそこって決めてるの」
そこでふと何かを思い出したみたいな葵咲ちゃんは、一瞬ムッとした顔をしてから、まるでそれを振り払うみたいにニコッと笑みを浮かべた。
「それにあそこの店員さん、みんなかっこいいし」
次いで、さらりと継がれた言葉に、僕は思わず歩みを止める。急に立ち止まった僕の背中に、葵咲ちゃんがぶつかったけれど、ごめん、という言葉が出てこないくらい、僕にとって彼女の言葉はショッキングで。
もしかしたら、さっき僕が意地悪をした意趣返しだろうか? それにしたって、その言葉は聞き捨てならないんだけど。