僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
「うちのバイトは大前提として図書館学を専攻してる子たちから採用するって条件がある。だからどうしても受講してる子達に女の子が多いと、女性の採用が目立ってしまうんだ」

 ある意味鈴木君をはじめとする数名の男の子たちは物凄くレアな存在で。その中でも毎日のように顔を出してくれる鈴木君は激レアキャラだともいえた。

「実際は本って重いし……力仕事も多いから男の子がもう少しいてくれると僕ももっと助かるんだけど……」

 今回復旧作業に思いのほか手こずった一因が、男性陣の人手不足というのも無きにしも非ずで。

 ついでに言うと書架の本は思いのほか汚れているから、蔵書点検なんかをするときには、エプロンなどを着けないと服が汚れてしまう。

 綺麗に着飾った女子大生にそういう作業を頼むときはそれなりに気を遣う。

「ねぇ葵咲。これだけは胸張って言えるんだけど……僕は彼女たちのこと、本当に何とも思ってないんだ。もちろん、大切な仕事仲間だとは思ってるけどさ、異性として見たことなんてただの一度もないよ?」

 僕がそう言うと、葵咲ちゃんがうつむいたまま、ほんの少しだけホッとしたように見えた。
< 85 / 132 >

この作品をシェア

pagetop