僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
つべこべ言わずに僕に惚れろよ
僕の言葉を聞いて、葵咲ちゃんが真っ赤な顔をして固まってしまったのが分かった。
その反応を存分に楽しんでから、僕は彼女の言葉を待たずにスッと身を引いた。
「……とりあえず出ようか?」
珈琲も紅茶も飲み終えているし。
まるで今告げた言葉なんてなかったかのように……。僕は伝票を手に席を立つ。
「葵咲、行くよ」
固まったように動けずにいる葵咲ちゃんの肩にそっと手を置くと、彼女は弾かれたようにビクッと肩を震わせた。
そうして恐る恐る僕を見上げてから、僕が何もなかったように微笑みかけるのを見て、慌てて荷物を手に立ち上がる。
会計のとき、律儀に財布を出そうとするのへ、「たまには格好つけさせて」と制してから支払いを済ませると、僕は当然の権利のように葵咲ちゃんの手を握って、駐車場へ出た。
「さ、乗って」
大学でもそうしたように彼女を助手席に乗せた後で、自分も運転席に回りこんで、シートに腰掛ける。
さすがにこのままだと暑いので、アイドリングストップ機能をオフにしてからエンジンをかける。
真っ暗な車内は少し湿度をはらんだ熱気に包まれていて……そこに葵咲ちゃんの香りがほんのりと混ざっていた。
僕だけの時には決して香らない微香。
その芳香が、エアコンの風に煽られて車内に拡散されていく。
目には見えないけれど、匂いというのはとてもエロティックだと僕は思う。
駐車場は二十一時を回ったこともあってか、車の出入りも殆どなく、割と閑散としていた。
もちろん、まったく出入りがないわけではないだろうから、それなりに注意は必要なんだけど。
その反応を存分に楽しんでから、僕は彼女の言葉を待たずにスッと身を引いた。
「……とりあえず出ようか?」
珈琲も紅茶も飲み終えているし。
まるで今告げた言葉なんてなかったかのように……。僕は伝票を手に席を立つ。
「葵咲、行くよ」
固まったように動けずにいる葵咲ちゃんの肩にそっと手を置くと、彼女は弾かれたようにビクッと肩を震わせた。
そうして恐る恐る僕を見上げてから、僕が何もなかったように微笑みかけるのを見て、慌てて荷物を手に立ち上がる。
会計のとき、律儀に財布を出そうとするのへ、「たまには格好つけさせて」と制してから支払いを済ませると、僕は当然の権利のように葵咲ちゃんの手を握って、駐車場へ出た。
「さ、乗って」
大学でもそうしたように彼女を助手席に乗せた後で、自分も運転席に回りこんで、シートに腰掛ける。
さすがにこのままだと暑いので、アイドリングストップ機能をオフにしてからエンジンをかける。
真っ暗な車内は少し湿度をはらんだ熱気に包まれていて……そこに葵咲ちゃんの香りがほんのりと混ざっていた。
僕だけの時には決して香らない微香。
その芳香が、エアコンの風に煽られて車内に拡散されていく。
目には見えないけれど、匂いというのはとてもエロティックだと僕は思う。
駐車場は二十一時を回ったこともあってか、車の出入りも殆どなく、割と閑散としていた。
もちろん、まったく出入りがないわけではないだろうから、それなりに注意は必要なんだけど。