僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』

「――葵咲、それが答えだと思っていいの？」

　とろん、と蕩(とろ)けたような表情の葵咲ちゃんを真正面から見つめて問えば、彼女はそれでも未だに迷いがあるのか、「分からないの……」と小さな声で呟(つぶや)いた。

「周りのみんなは理人は私のお兄さんだって言うし……私もそう思わないといけないのかなって。でも……」

　僕が怪我をした時、兄を心配している妹と言う感覚とは何か違う、と感じたのだと彼女は言った。

「でもそれが何なのか……。理人に何をして欲しいのか。自分でも自分の気持ちが……分からないの」
　意識のない僕の寝顔を見ていたら、僕の唇に触れてみたくなって、その気持ちに戸惑ったのだと彼女は恥ずかしそうに言った。

　それはもう殆ど愛の告白だと思うんだけど。

　でも、彼女の性格からして、僕を好きになった自分を認めるのが怖いんだろう。

　だったら僕がきっかけを作るしかない。

「葵咲。分からないんなら……つべこべ言わずに僕に惚れろよ」