【SR】卵
「これでも白を切るつもり?」
「なんだお前、そんな探偵みたいなことしやがって!それなら俺だって言わせてもらうけどな、お前がこそこそ若い男と会ってるのを、俺が知らないとでも思ってるのか?」
「な、何を根拠にそんな……」
「外回りの時に見たんだよ。一度だけなら見間違いかとも思ったが、二度目は間違えないぞ」
「自分のことは棚に上げて!いいわよ、こんな所、出て行きますから」
そう言うが早いか、リビングのドアを開けて、勢いよく母が出て来た。
「あら、望……聞いてたのね。そういうことだから、お母さん、少し留守にしますから。ご飯は、お祖母ちゃんの所で食べてきなさいね」
「そ、そんな、ちょっと待ってよ!」
母は、私のことなんか、もう視界にも入っていないようだ。
私の手を振り払うと、両親の寝室へと駆け上がった。
ドサドサと荷物を詰め込む音が聞こえ始める。
「ねえ、お父さん!お母さんを止めてよ!」
父はそう声を荒げる私を一瞥し、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、ソファにドカッと体を沈めた。