【SR】卵

…5…





放課後、帰り支度をしていると、後ろから私にしか聞こえない小さな声が聞こえてきた。



クラスメイトは皆、残り半年をきった高校受験に向け、家路を急ぐように教室を出ていく。

誰もいない家に帰るのが、なんとなく嫌で、ノロノロと片付けをする私は、気付けばいつも教室を出るのが最後だった。

塾がある日なら、家にいなくて済むので、まだ気が楽なのに……

また、いつも通り最後になった教室に、今日は彼と二人になっていた。


「おまじない、してみた?」


振り返ると、彼は帰り支度を万全に整えていた。

まるで私を待っていたかのようだ。

私は昨日もらった人形を、受け取った時の薄い包みごと鞄から取り出し、彼の机上に広げた。

すると、私が言葉を発するよりも早く、彼はこう言ったんだ。


「もう、願いごと、唱えたんだね」

「え?なんで……わかるの?」


すると彼は、人形の右脇腹あたりを指差していた。


「しかも、その願い、少しだけど叶ったみたいだね」


どうして?

そんな私の動揺を見透かすように、彼は私の瞳をジッと窺っている。

耐え切れずに人形に視線を落とすと、彼が指差した所には、昨日はなかった亀裂が入っていたんだ。







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