【SR】卵
「ねぇ、お願い、これ、願いごとを取り下げることって、出来ないの?」
母が出て行ったのは、こんなおまじないのせいじゃない。
そんなこと、わかってる。
わかってるけど……
私は、彼にそう問わずには、いられなかったんだ。
「何をお願いしたの?」
彼の顔が、段々暮れてゆく太陽に、赤く染まっていく。
私はもう、縋るような思いだったんだ。
「家族なんて、いなくなればいいのに……って。でも、違うの、そんなこと、心から思ってる訳じゃない。ただ、口うるさい親や祖母や、お兄ちゃんが煩わしかっただけなのに……」
堰を切ったように、溢れ出る涙が、いく筋も頬を伝う。
男の子の前で、こんな泣き顔なんて、絶対見せたくないと思ってたのに。
そんなこと、気にしている余裕もなかった。
でも、彼の次の言葉で、その涙はピタリと止まった。