【SR】卵


その時のことは、あまり覚えていない。

とにかく、救急車を呼んだ。

それから、父や母に電話を掛けたけど、誰にも繋がりはしなかった。



救急隊員の人に言われるがままに救急車に乗り込み、気がつけば、家から車で五分ほどの総合病院の処置室の前で、ベンチに座っていた。

祖母までいなくなったら、どうしよう。

心に浮かぶのは、ただ一つ、後悔だけだ。



私が、あんなおまじないしなければ、こんなことにはならなかったのに……

おまじないなんて信じてなかった。

なのに、まさか、これほどの効き目があるなんて



俯き膝の上で握り締めた拳を見つめていると、看護師さんが近づいて来たのに気づいた。


「あの、お祖母ちゃんは?」

「大丈夫ですよ、検査もしましたけど、ただの風邪だけみたいなので。今日だけこちらで入院してもらって、明日にはおうちに帰れますよ」


よかった―――

家族なんていなくなっちゃえば……そんな言葉で、お祖母ちゃんが死んでしまったらどうしよう?

そんなことまで心配していた私は、全身の力が抜け落ちてしまって、ベンチの上にへたり込んだ。



少し落ち着いた私は、眠っている祖母の顔を確認し、家路へと向かった。





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