【SR】卵



教室に入ると、昼休みも終わりかけだった。

休み時間もずっと席に座ったままの彼の姿は、今日はない。

隣の和江を捕まえて聞いてみた。


「ねぇ、彼、今日、休みなの?」


彼の席を指差し、そうたずねた。


「望、おはよー。今日は重役出勤じゃん。留学生なら昨日、急に国に帰ちゃったって、今朝、前田が言ってたよ」

「え…そんな……」

「何、何~?望って、もしかして留学生くんのこと、好きだったりしたの?」

「そ、そんなんじゃないよ。ちょっと職員室行ってくる」


囃し立てる和江を残し、教室を後にした。



とりあえず、遅刻の理由を前田に報告しなくてはいけない。

また、グチグチ小言を言われるのは、うんざりだ。

職員室の前で、前田の姿を探すように覗き込んでいると、後ろから声を掛けられ、驚いて振り返った。



「あ…校長先生」

「平井…望さん、ですか?」





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