【SR】卵
亜由美の両親がどんな人かは知らないけど、うちの父みたいに嫌な奴じゃないと思う。
あんな嫌味な男、父だけで十分だ。
それに一人っ子だって聞いてる。
きっと可愛がられてるだろうし、うちの家庭環境よりはマシに違いない。
高校だって、父の見栄のために、私学の進学校を受験するよう、勝手に進路も決められている。
父も母も、私が何に興味を持ってて、何がしたいかなんて、全然興味がないんだ。
私に選択権なんてない。
父の「金を出すのは俺なんだ」という台詞には、もううんざりだった。
廊下から見えるグラウンドには、夕日をバックに走り回る、サッカー部の影が見える。
この寒空の下、未だに半袖短パンの姿は、見ているこっちが寒くなる。
私は、足早に教室へと向かった。