【SR】卵
「これは、僕の国のお守りなんだ。卵の殻で作ったんだ。この卵が、君の願いを叶えてくれるよ」
彼はそう言うと、私の前で微笑んでいる卵の人形を、優しく撫でた。
この卵が、私の願いを叶えてくれる……?
「そんなわけない、って思ったでしょ?」
「え?」
思いがけず言い当てられて、少し焦ってしまった。
「大丈夫、このおまじないで、平井さんの涙も、止まるはずだよ」
彼は、そう言って微笑んだんだ。
「だから、私泣いてなんかないよ」
彼が私をからかっているのか、それとも、心を見透かされているように感じるのか、私は居ても立っても居られず、席を立った。
「こんなもので、願いなんか叶わないよ」