【SR】卵


「これは、僕の国のお守りなんだ。卵の殻で作ったんだ。この卵が、君の願いを叶えてくれるよ」


彼はそう言うと、私の前で微笑んでいる卵の人形を、優しく撫でた。

この卵が、私の願いを叶えてくれる……?


「そんなわけない、って思ったでしょ?」

「え?」


思いがけず言い当てられて、少し焦ってしまった。


「大丈夫、このおまじないで、平井さんの涙も、止まるはずだよ」


彼は、そう言って微笑んだんだ。


「だから、私泣いてなんかないよ」


彼が私をからかっているのか、それとも、心を見透かされているように感じるのか、私は居ても立っても居られず、席を立った。


「こんなもので、願いなんか叶わないよ」





< 8 / 35 >

この作品をシェア

pagetop