運命の歯車
「あ、居た居たかな子」

ふと、横からチエミに声をかけられた。
少しふっくらぽてっとした、肉まんみたいな可愛らしさを存分に発揮する逞しい声音。
私は返事をする。

「なぁに~」

「来て!」

教室の入り口から、来いとジェスチャーされる。海外だと挑発になるやつ。
「これ、女子のみんなから」
そこには、クラスの全員の女子が。
えぇ……みんな、おおげさだな。

「頑張ってね!」

ゆきえが、ガッツポーズをして、代表で私にと小さな袋を手渡す。

「開けても?」

周りがいいよ、と言ったから私は袋を開けた。
なかには手作りの、布で作ったお守りが。

「ウチらでつくったの。帰ったら、勝負なんでしょ? 頑張ってね☆」

サケノがウインクした。ほろっと涙が出てきて、みんな、ありがとぉ、と私は泣き声で礼を告げた。


 にぼし、いや、片口さん……


帰り道。
頭の中で、何度もシミュレートする。
ああん、そもそも何て呼べば良いの?

泣き出したいような気持ちを堪えて、鞄の前ポケットに入れたお守りを何度も見る。

うまくいくかはわからない。でも、誰かを好きになることには種族なんて関係ないと思う。

こんなに、愛しい気持ちははじめてだ。
そう、付き合わなくても、にぼし、といや……片口さん?と。
友達にくらいは!

私は手をぎゅっと握りしめて決意した。
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