ディープ・アフェクション
視界の中で、赤いチェックのスカートがひらりと揺れた。
「……、」
喉元に何かが詰まったように苦しくなる。ごくりと生唾を飲み込み、口をきゅっと一文字に結う。
不必要な程に身体には力が入っていたはずなのに、手からは知らないうちに力が抜けてしまっていたらしい。
次の瞬間、持っていたビニール袋がバサバサと派手な音を立てて地面に落下した。
シンと静まり返っていた辺りに、その音は大きく響いたと思う。
それは数メートル先の皇明にも聞こえたらしい。その証拠に、皇明の双眸が此方に向いた。
パチリ、と視線がかち合う。
真っ先に頭の中に浮かんだ言葉は“マズイ”だった。その感覚は、悪事が見つかった時のそれによく似ていたと思う。
「……里茉?」
女の子の肩をやわく掴んだ皇明は、その華奢な身体をやさしく引き剥がしながら、呆然と突っ立っている私の名前を小さく口した。
その声を聞いた瞬間、私の足は地面を勢いよく蹴って、走り出していた。
もちろん、皇明の家とは逆方向に。