ディープ・アフェクション




今まさに会いに行こうとしていた人物の弟が目の前に現れたから、驚いた。しかもそれが久しぶりの再会だったから余計だ。

私の記憶が正しければ、もう数年ほど顔を合わせていなかったと思う。

私よりも数段、高い位置に居る空大はきょとんと目を丸くして「…里茉?」と私の名前を呟いた。



「そー!里茉!めちゃくちゃ久しぶりじゃない!?元気してた??」

「まあ、うん。元気」


学ランに身を包んだ空大はとても成長したように見えた。

最後の記憶が中学に入学するかしないかくらいで止まっているから、当たり前といえば当たり前かもしれない。


「めちゃくちゃ背ぇ伸びたんじゃない?今何センチ──」

「っ、」


言いながら、目の前の階段を一段上がって、その頭を撫でようと手を伸ばした。

けれどその次の瞬間、空大はまるでそれを拒むように思い切り後ろに仰け反ったから、唖然としてしまう。


「……」

…え、なに今の???


きょとんとした表情で見つめていれば空大は少し気まずそうに、はぐらかすように「そういえばさ」と口を開いた。



「兄ちゃんの部屋に女用の服とかいろいろあったんだけど、あれって里茉の?」

「え、うん。そうだけど……」

「もしかして兄ちゃんと里茉って付き合ってんの?」

「……」



まさか今更、こんな質問をされるとは思わなかった。

だって、私たちの関係に“恋人”という名前がついたのは、もう3年近く前の話しだ。







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