ディープ・アフェクション
言わない方がいいんだろうかと一瞬 考えたけれど、別に隠す事でもない。
知られて困る事なんてひとつもないんだからと言い聞かせるように、口を開いた。
「えー…っと、何も聞いてない感じ?」
「うん。なんも」
「実はそうなんだよね。付き合ってんの、私たち」
「やっぱそうだったんだ」
「うん。まさかって感じでしょ?」
「まぁ、驚いてる」
へへへ、と乾いた笑みを貼り付けてから「引き止めちゃってごめんね」と謝って、ひらりと手を振れば、お行儀よくぺこりと頭を下げた空大は「じゃあ また」と私の横を通り過ぎて、階段を降りていった。
その様子を横目で見送って、私も2階にある“恋人”の家へと向かう。
ガチャリ、玄関とリビングを繋ぐドアを開ければ、ソファに寝そべるようにして寝ているそいつの姿が見えて、
「──皇明《こうめい》」
その後ろ姿に、声を投げかけた。