星の残像は、白に滲む



「だって私のことを教えたら、一条くんは追ってくるでしょ」
「迷惑ってことですか」
「ううん、そうじゃないの。ただ一条くんには私に振り回されず、自分のしたいことをしてほしい」


なら、どうして会いにきたんだと言いたくなる気持ちを抑える。

手を伸ばせる距離にいるのに、この人は掴ませてくれない。

こんなふうに、最後まで俺の気持ちを翻弄していく。



「でもまたいつか出会えたら……そのときはお茶でもしよっか」
「お茶って……」

そんなのまるでできるものなら探してみろとでも言われている気分だ。

だけどこの人なら、本当に俺が探すことができたらお茶をしてくれるだろう。


「それじゃあ、不満?」
「連絡先もつけてください」
「欲張り」

くしゃりとさせたあどけない顔で星藍先輩が笑った。
拒否をしないということは、そのときは教えてくれるのかもしれない。



「一条くん、最後にひとつだけ」

俺の目をまっすぐに見つめると、星藍先輩が泣き出しそうな表情で口元を緩める。



「私を見つけてくれて、ありがとう」

そして、瞬きをすると一筋の涙を流した。

でもそれを俺は拭うこともできなくて、呆然と泣き顔を見ていることしかできなかった。


ハンカチで涙を拭うと、星藍先輩は俺を置き去りにして「さよなら」と言って背を向けて歩いていく。




掴めそうで掴めない、ずるい人だった。
俺の傍に寄ってくるくせに本心を見せてくれない。

だけど、そんな先輩が好きだった。



もらった卒業祝いの花のブローチのリボンには、常磐星藍という文字。


白いリボンのに黒い何かが滲んでいる。

ひっくり返すと、裏側には黒いペンで文字が書かれていた。





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