星の残像は、白に滲む
*
委員会が終わり、すぐに帰ろうとしたところで何故か担任が俺の元にやってきた。
「一条、お前これやって提出な」
渡されたプリントには、「英語小テスト」と書いてある。
「イチジョーくんがんば〜!」
木崎さんは鞄を肩にかけてにやりと笑ってきた。
担任は眉を寄せて木崎さんに「お前はギリギリだったからな」と不機嫌そうに言い放つ。
「やったー! ギリギリバンザーイ」
「あと木崎は今度遅刻したら問答無用で補習。森井にも言っとけ」
「はいはーい! じゃ、再テストがんばれ〜!」
逃げるように木崎さんが去っていき、担任が困ったようにため息を吐いた。
木崎さんたちのグループは遅刻が多いからある意味問題児として見られているらしい。
俺なんて無遅刻無欠席だし、ちょっと英語が苦手なだけなのに。
「ほら、一条座り直せ」
「せんせー! 無理無理! 俺無理だってー!」
「無理じゃなくてやるんだ。お前この小テスト、一週間前にやったやつだぞ」
「一度やったならもういいじゃん!」
もう一度小テストしろなんて、絶対に勘弁だ。
けれど担任は、青くなっている顎をさすりながら口をへの字に曲げる。
「名前しか書いてなかっただろ。やり直し」
「無理ー! 俺一生日本で生きていくもん」
「いいからやれ、学生の義務だ」
首根っこを掴まれて、強引に再び図書室の椅子に座らせられた。
他クラスのやつらは、そんな俺を見て「拓馬どんまい」とか言って笑いながら帰っていく。
最悪だ。委員会が終わったら即行帰って、清春とサッカーやろうと思ってたのに。
「あ、やべ。ちょっと用があるから、俺は外すけど絶対帰るなよ。後で見にくるからな」
この隙に帰ってしまおうかと思ったけれど、まだ図書室にいた星藍先輩に担任が「こいつ見張ってて」と声をかけてしまった。
「わかりました」
星藍先輩は嫌な顔をせずに頷く。
放課後の貴重な時間を、俺の見張りなんかに使っていいのか?
「一条、逃げるなよ」
担任は念を押してから、図書室を出て行く。逃亡するわけにもいかず、放課後の時間が潰れることを心の中で嘆きながら頭を掻く。
……仕方ない。やるしかないか。
先輩は俺の目の前に座ると、じっと見つめてくる。さすがの菩薩のような対応を常にしている星藍先輩でも不満のひとつでも言ってくるかと覚悟をして、へらりと笑う。