星の残像は、白に滲む
「恋なんて一過性だから、この気持ちもいつか消える」
震えた声は、まるで縋るようだった。
「先輩は、嘘つきだ」
生き方が下手な、嘘つき。
上手く生きているつもりでも、全然楽な方法じゃない。むしろ自分を苦しめている。
「知ってる」
今にも泣き出しそうにぽつりと溢した。
「私は自分の心にすら嘘をついて、周りに合わせて表情や言葉、感情を綺麗に作って、理想の自分のフリをしてるから……だから誰にも本当の私なんて好きになってもらえない」
「それでも俺は偽っている先輩だとしても、そこも好きだから。今以上に本音を知っても、そう簡単に嫌いになんてなれないし」
「……どうして私のこと想ってくれるの?」
この人が欲しい言葉なんて探したくない。
きっと探したところで、粗探しされて拒絶される。
恋愛そのものを恐れて、想いなんてずっと続かないと言っているこの人に確証のないものを言葉として表しても無意味だ。
「あんたが自分のこと傷つけてるのに気づかないフリしてるの見て、イライラするから」
「なにそれ、変な理由。……それって好きって言えるの?」
「好きって、そんな美化されたものじゃなくていいと思うんすよね。絶対的なものじゃなくても、たぶん好きかもくらいの感情だって、いいじゃないっすか。先輩は完璧を求めすぎです」
優しくて澄んだ声も、泣きそうに笑う顔も、大人ぶって平気なフリをするところも、全部嫌いで全部好きだ。
好きになんてなりたくなかった。
振り向いてなんてくれないし、報われない恋をしつづけている人を好きになるなんて、苦しいだけだ。
だけど俺はやっぱり、諦め悪くて望んでしまう。
「面倒くさいですよね、先輩って」
「それなのに好きなの?」
「だから好きなんですよ」
星藍先輩は手を握る力を強くしてきた。
なんだか先輩が泣いている気がして、隣を見ることを躊躇う。
好かれたいくせに、好かれることが苦手なこの人にどんな言葉を尽くしていけばいいのかわからない。
だけど、傍にいたかった。
忘れていいなんて、言わないでほしい。
先輩にとっては一過性のものだとしても、俺にとっては忘れたくない日々だった。
たとえ、先輩が俺の前から去って行ってしまうとしても。