星の残像は、白に滲む


それから先輩が図書室を訪れることはなかった。

連絡先も聞いていなかったし、志望校も知らないので卒業したら本当に関係が途絶える。

だけど三年生の教室へ足を運ぶこともしなかった。

たぶん、連絡先を聞いてもあの人は教えてくれない気がしたから。追いかけてしまえば、逃げてしまう人に手を伸ばしても、振り払われてしまうだけだ。



そして迎えた卒業式の日。
大勢の卒業生の中から、俺はすぐに星藍先輩を見つけることができた。

泣いている女子に優しく声をかけている彼女は、こんなときでさえも周りのことばかり見ている。

いつかあの人が壊れてしまいそうで怖い。
だけど、手を差し伸べても彼女は俺の手を取ることはない。


諦めなくてはいけないとわかっている。


だけど、卒業式の後に俺は図書室へ訪れてしまった。

十二月から会うことはなくなったけれど、俺は何度も通っていた。

あの人にとっては一瞬の思い出のようなもので、もう俺のことを気にかけてすらいないかもしれない。


せめて三年の教室へ行って、卒業おめでとうございますくらい言おうかとも思ったけれど、やめた。


今あったら未練がましく引きずってしまいそうだ。


これでいい。

お別れも言わず、さよならをした方がきっといつか想いを風化してくれるはず。





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