今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「あ、ちなみに俺は4歳の頃から天音ちゃんと仲がよかったから」

「ふっ、バカだな、俺は3歳だ」

思わず鼻で笑ってやった。


なんなら、母さん同士仲がよかったんだから腹にいる時からだろ。


「はぁ!?俺なんか——」

「うっせぇ颯」

どうせ前世の前世の前世とか言ってくんだろ。

いちいち颯は首突っ込みやがって……。


「前世の前世の前世の前世の前から、きっとようちゃんは気高き王女様で、でも本当はか弱くて近くで仕えてた俺がようちゃんを守りつつ恋に落ちて……」

「お前はそれで小説でも書いてろ。いま大事なのは———」

「はぁ!?久遠、お前ひどくね!?俺はいつになったらようちゃんを語れる———」


う、うるせぇ……。

こいつ、ありえねぇくらいうるせぇ。


「おい白雪、出てくぞ」

「不本意だけど行く」

嫌だが白雪と意見が一致したので部屋を出て行こうとする。

「おい、ちょっと待て!!!俺の……!!お前しかいないんだ久遠んんー!!!!!!」


……。

そろそろ堪忍袋のおが切れそうだ。


そして、その時だった。


っ……!!!これはっ……。


「っ!!これは、ようちゃん様の香り!?」

ガチャン!!

「こら颯!!!!!!!!!!!」

「ぴゃー!?久遠くん!?いや!?帰る帰る!!」


なんで……。

勢いよく屋敷のドアが開いたと思えば、そこにいたのは天音と陽奈だった。
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