今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

重いのがだめなら、直せばいい。


「……もう帰る、じゃあな天音」


ドアの目の前に立っている天音の小さな頭を撫でて額にちゅっとキスを落とし、俺は部屋を出た。


……どうしたら、わかってくれるんだろうか。


……そういえば、明日は天音の誕生日、だよな……。

くまのぬいぐるみが欲しいって、言ってた。


どうにか明日に間に合うようにしなくては。


そう思いながら颯の屋敷を出て、待たせて置いた車に乗り込む。



「はぁ……」

「なにかお悩みですか？」

車を運転している使用人の東歩斗（あすま　ほくと）がそう俺に問う。


「別に」

「……最近久遠様はお変わりになられましたね」

「……」

変わった……？


「天音様に小さな頃出会った時、死んだ目をしてましたもの」


失礼な。

「……」

「でも、しばらくして明るくなられました。けれど、天音様と関わらなくなってからはまた死んだ目をして毎日過ごし、目から血が流れそうなくらい天音様の写真を盗撮して部屋中に飾っておられましたのに、いまはこんなに……」


……相変わらず失礼な使用人だ。


「……それに、昔の久遠様はよく物を壊しておりましたね」

「……は？」