今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「次期生徒会長は天音ちゃんかな〜」

「へっ?い、いいんですかっ……!?」

中学生の時、生徒会長の大変さは味わったけれど、高校生になっても、やってみたいっていう気持ちがあった。


それに……それに、いまは没頭できるものが欲しい。

「うん。ふふっ、天音ちゃんとは知り合ってまだ一年経った程度だけど、任せられるくらい頭脳明晰だからね」

「そんなっ……う、嬉しいっ……」


それって、私のこと信用してくれてるって、ことだよね……?

嬉しすぎて、つい目元がジーンと熱くなった。


「……伯斗先輩!」

「どうしたの?」

「私、先輩のこと、大好きです!」


そう言いながら先輩の綺麗で大きな手を握った。

「……」

「敬愛してます!」


多分、私の中で1番尊敬しているのは伯斗先輩だ。


「……ねぇ、天音ちゃん」

「?はい?」


すると伯斗先輩は私の頬に優しく手を当てた。

「僕は、政略結婚させられるから……婚約者が、いるんだけど……天音ちゃんのこと、好きで……仕方が、なぃんだ……」


いまにも消えてしまいそうな、儚い声で伯斗先輩はそう言う。

……え?す、き……?


「なんでおんなじ金持ちなのに……久遠みたいになれないんだろ。」

伯斗先輩は強い力でぎゅっと私を抱きしめた。

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