今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
*3.5章*
愛が重くても
蘭くんに守られて、その後は先生が教室に駆けつけ、いまは何事がなかったかのように授業が再開された。
「……天音……早退した方が……」
「大丈夫だよ、陽奈ちゃんっ……!」
もう、大丈夫だ。
「大丈夫なわけっ……!」
「センセー」
「どうした上杉」
「天音サンと行きたいところがあるんで連れてってイーですか」
無気力に久遠くんがそう言いながら、私の方を見て優しい笑みを浮かべている。
私の身体はゾクリと震え上がった。
「……わかった、いいぞ」
「……えっ……」
嘘、でしょ……?
いくら久遠くんだからといえ、そんなのおかしいよ……。
「じゃあ天音、行こうか」
瞬間移動したかのように早く久遠くんは私の目の前に立っていた。
「ちょ、やめなさいよ!!」
「天音ちゃんから離れろ!!」
クラスのみんながそうかばってくれても、力無しに私は軽々と抱き上げられた。
「……変なことはしないよ。ただ、図書室に行くだけ」
「図書、室……?」
なんで……?
ぷるぷると身体が震える中、そのまま図書室に連行された。
……落ち着く本の用紙の匂いがする。