今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「!っ……ひっくっ……グスッ……」

「……?久遠くん……?」


あ、あれっ……久遠くん、泣いてるっ……!?


「だ、大丈夫……!?」

「天音ぇっ……」


次の瞬間久遠くんはすごい勢いで私の腰に手を合わしてお腹あたりに抱きついてきた。


「ずっとっ……ぎゅうってしたかった……」

「そ、そっか……」

「天音に……11年間会えなくて……死ぬかと思った……」

「っ……」


私は、久遠くんの気持ちを知らずに潰してしまっていたのかもしれない。


「ごめんね……私、信じられなかったの」

「え……?」

「大好きな、久遠くんは……私なんか、眼中にないと思ってたから……」


久遠くんが、大好きとか、言ってくれても信じられなかったのは自分に自信がないだけだ。


「……そんなこと、ない」

「えへへっ……ありがとう」


私は久遠くんの小さな頭を優しく撫でた。
 

「っ……うん……」

「あっ……さすがに、教室に戻るね、私。」

「待って……」


立ち上がった私を力なく呼び止める久遠くん。

「……ん?」

「俺も、行く……」

「えっ……でも、お目目真っ赤だよ?」

「っ……行くの……」

「わ、わかったよっ……!」


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