今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「……っ……集中できないよっ……」

「しなくていい」

「で、でも成績がっ……」


学力を上げておかないと……大学に行くにせよ、就職するにせよ困っちゃう……。


「……僕が養うんだから……いらない。学力なんて」

「っ……!」


私は気づいてしまったのだ……。

久遠くんの口調が、出会った時のようになっていると……。

時間が経つに連れ鮮明に蘇っていく記憶。


久遠くんは最初は強がって、俺とか俺様とか言ってたけど、ダンダンと、僕っていうようになってって……。

天に召されちゃうくらい可愛かった……。


それで……いま、甘えるような口調になられたら、死んじゃうよっ……!



「天音は……僕の天使……だから……だめ……」

「だ、だめって……?」 


な、なにがだめなのっ……!?


「僕にしか集中したら、だめ……」

「っ……」


なんでそんなに可愛いのっ……。


「……ここ……これでいいの?」


後ろから手を伸ばしてきて、久遠くんが数学の答えの部分を指さした。


「あっ……間違えちゃった……」

「……17歳のくせに、おバカだね」

「……?はっ……!」


久遠くんのふとした言葉で私は気がついた。


今日、誕生日だっ……!?

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