今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「あっ……そ、そうだよねっ……」

「この問題、わかんない?」

「わ、わかるよっ……!ぼ、凡ミスしちゃっただけ……!」


慌てて消しゴムで回答を消した。


「……次間違えたら、お仕置き」

「へっ……!?やだっ……」


もぞもぞと動いて久遠くんは私のお腹をくすぐり始めた。


「っ……!ぷっ……ううっ……ひ、ぁ……」


こちょこちょされて、どうしようもなくて目元に涙が浮かんだ。


「っぁ……」

「……マスク……して」

「な、なんれ……?」

「そんな可愛い顔、教室でしないで」


っ……。

そうやって、急にスマートに可愛いって言わないでいただきたい……。


「可愛い顔なんて、して、ないよっ……」
 

恥ずかしいからお願いだからやめて……!


「してる。見せてあげようか?」

「や、やだ……!」

「……チェッ」

「ううっ……久遠くん、授業受けないの……?」


いくら文武両道の久遠くんとはいえ、授業はやっぱり受けた方がいいんじゃっ……。


「……じゃあ天音が僕のためだけに授業してくれるなら、受ける」

「ええっ……!それは、私が教える側なのっ……?」

「当たり前」


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