今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「……そうなんだ。わざわざ自己紹介ありがとう」

「!い、いえっ……あっではっ……!」

「うん、バイバイ」


いつのまにか俺は敬語を忘れていたけれど、あの子はいい子だとすぐ勘づいた。


……日向天音か。


なんだかあの子に見合った名前だなと思いながら家に帰った。


ガチャンッ


「ただいま」

「おかえり理人。」


優しい表情でそう俺におかえりを言ってくれる兄さん。


この人は凛人。


俺の兄であり、国内トップの大学に通う大学生だった。


「……なんかあった?」

「?どうして?」

「なんか表情明るいから」


にこにこと優しく微笑む凛人。


「……いや、えっと……」

「ん……?あ、もしかして天使さまにあったの?」

「……天使さま?」


も、もしかして、あの日向天音……?


「……めっちゃ美少女で、その人にあうとしばらく幸せな気分に浸れるって噂。町内じゃあ知らない人はいないよ」

「へ、へぇ……それって、まさかだけど、日向天音……?」


なぜだかドキドキして、ドクッドクッと心臓が早く動く。


「……あーそんな名前だったかもね」

「マジか……」


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