今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
あの子が……。


「……俺も一回会ったことあるよ」

「すっげぇ美人だよね」

「そうだねー」


あんな美人で、一目見だけでも無防備だとわかるくらいで、大丈夫なのだろうか……。


「……そういえば、高校の志望校決まった?」

「ごめんまだ決めてない」


まだいまは夏だけど……。


できるだけ将来のことは見通しておかないと。


「……そっか、じゃあ婚約者はどうする?」

「っ……いらない」

「本当にいいんだね?そこら辺の令嬢と結婚しちゃったら方が、将来的に金の心配はな——」

「大丈夫」


……女なんて、大嫌いだから。


兄さんはそんなことをわかってても聞いてくる、それは俺のことを心配しているから、だけど。

聞かれるたびに身体に重しが乗って行くような気分になる。


「……お金は?足りてる?」

「うん、高校生活送れるくらいのお金なら貯金で足りる」

「その先は」

「働く。」


自分で言うのもなんだけど、俺は学力が悪い方ではなくむしろめちゃくちゃいい方だから、働こうとすればなんとかなる。


……っていうことで、俺は高校生になったら一人暮らしをする予定だ。


もう親とはまともに関わってもないし。


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