今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

……それは、共感できる……。


「……ってかさ！理人アタシがいんのにひどくなぁい？」


そう言って俺の腕にくっついてきた帳。

その帳を振り払って、天使さまに視線を移しながら俺は口を開ける。


「……お前は彼女なんかじゃないよ。自惚れないで自意識過剰野郎」

「っ……もう、帰る！！！」

「あーあ、帳帰っちゃったー」


うるさく騒ぐ連れたち、そして可愛らしく客に対応をする天音。


そして、ある時だった。


ドンッ


「きゃぁっ……！？」


天音が男性客にぶつかられて、俺の方に倒れてきたのだ。


ぎゅっと……

思わず抱き留めてしまった。


ふわっと広がる甘い匂い。


思ったよりも倍に華奢な身体だった。


「わわっ……ごめんしゃいっ……大丈夫ですかっ……？」

「え？あ、うん」


俺に体重がかかってるはずなのに、ものすっごく軽い。


どれほど手をかければ、これほどの完璧な人間に育つのだろうか……。


「本当にすみませんっ……！わ、私本当バカで……」

「いや、いまは天音ちゃんがぶつかられてそうなったんだから仕方がないよ」


気づけばポロッと出ていた名前。


「！あ、天音ちゃんっ……！そう呼んでくれると嬉しいです……！あ、あと、庇ってくれてありがとうございます……！！」


心の底から嬉しそうに、偽りのない笑みを浮かべた天音ちゃん。