今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「……お前、なにしてんだよ」

「なにって?」

「とぼけんな」


俺は知ってる、コイツは学園の裏で色んなヤツを買収しまくって、天音に手を出すヤツを消そうと。


「……ってかさ、仁いじめられてたでしょ?その格好だっせ」

「るせぇ」


よほど面白いのかクスクス笑いまくる久遠。


「あ、あの日向——」

「どうしたのかな。俺の天音になにか用?」

「く、久遠くっ……」


天音が男子に話しかけられたかと思えば、久遠が素早くその男子に返事をし天音を抱きしめた。

ムカつく……。


俺は絶対天音を自分のものにする……。



そして、休み時間。


「……あ、あのっ、仁くん……?」

「どうしたの?天音」


教室で急に話しかけられて、びっくりしながらもとても嬉しかった。


「……さっき、久遠くんに変装って言われてたけどっ……それって、どういうこと、かな……?」

「聞こえてたの?」

「う、うんっ……」


天音って耳いいんだな、じゃなくて。


天音になら、話してもいいだろうか。

騙してたって、怒らないだろうか、嫌われないだろうか……。


「……あっ、無理に話さなくていいんだけ——」

「話す」

「へっ?あ、あ、ありがとうっ……」
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