今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「ちょ、陽太……ごめんね、いまは颯と遊んでるから」

「やだよ!そう言って小さい頃から颯ばっかと遊んで、僕とは遊んでくれてないじゃん!」


そんなこともないんだけどな……。


「颯は彼氏で大事、陽太は弟として大事。いーい?私にも気分があるの」


颯といたい時と、陽太といたい時、ひとりでいたい時、天音といたい時。


「僕にだってあるもん!」

「でもそれは都合よくいくわけじゃないの」


いい加減私から離れさせないと、将来私と颯が結婚した時に、3人で同居することになっちゃいそう……。


「んんっ。いいか陽太。一応俺はお前の義兄様になるんだから、ちゃんと礼儀正しく——」

「許さない!!お前なんかに、姉ちゃんはやらん!!」


娘はやらんみたいなこと言ってる……。

まったく。


ぷんぷんと怒っている陽太と、どす黒いオーラを放ってにこにこと笑っている颯。


「あーもう醜い喧嘩はやめなさい」

「はぁ!?だって、だって!!俺とようちゃんは小さい頃から結婚するって!生まれる前から!いや、前世から誓ってたじゃないか!!」


それはさすがにわからないけど……。


「たしかに、結婚する約束はしたし私もそのつもりだよ」

「!!やっだぁー!!ようぢゃーん!!!」


再びすごい力で抱きついてきた颯。


はぁ全く……大袈裟だけど……嬉しい……。


「……だめだよ!僕だって、僕だって!!お姉ちゃんと結婚するって約束したもん!!!」


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