今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
天音は俺のだ。
天使さまなんて、呼び方をするな。
お前らが気安く名前を呼ぶんじゃねぇ。
「……天音、自分で弁当作ったの?」
天音が廊下のヤツらを見つめるのが嫌で、話しかける。
「へっ!あ、うんっ……!!」
「すごいな」
やっぱり……ちっちゃい頃から、料理が上手だっただけきっとものすごく上手いんだろうな。
「!そ、そんなことないよっ……!」
そう言いながらも、ものすごく嬉しそうだ。
よかった。
俺は愛は重くても、天音の悲しんでる顔が好きだとそこまでは狂っていない。
ただ……1つ、天音が笑うのは、俺のこと、泣くのも俺で、天音の豊かな表情の元は全部俺じゃなきゃだめだ。
「あっ……久遠くんは、お昼ご飯なぁに?」
「パン」
「……?そ、それだけっ!?」
「ん。クリームパンだけ」
過去に天音と食べたクリームパンが異様に美味しかったから、天音と昼ごはんを食べるとなってクリームパンを買ってきた。
「久遠くんって、甘いものが好きなの?」
「……まあ」
天音と食べている時なら。
「そ、そうなんだ!」
「私も、甘いの好きなんだっ……!」
「シュークリームとか、ドーナツとか?」
「へっ!?よ、よくわかったねっ……!!」
本当に天音の表情は豊かだな。
にこにこしていると思ったら、今度は驚いて。でも、またにこにこして。
「久遠くんは、すごいねっ!」
「……天音のことなら、なんでも知ってるよ」
思わずそんなことをポロッと言ってしまった。
「……?久遠くん、なんか言った……?」
「なにも」
……よかった、聞こえてはいないようだ。
ガチャン。
屋上に着き、重たいドアを開ける。
「わぁ!!見てみて久遠くん!空がとっても綺麗だよ!!」
驚くほどの快晴の空を見上げながら天音がそんなことを言う。
「そうだな」