今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「?う、うん……?」

あ、あれ……?怒ってる……?

「……アイツは……俺より…………上か?」

「っ……!」

私は気づかぬ内に久遠くんに壁ドンをされていた。

そして、鼻先が触れるほどに顔が近づいている。

……なによりも……久遠くんの声が、ものすごく低かった。

久遠くんの綺麗な水色の瞳がの中で、黒い影が見えるような気がした。

「アイツの方が、カッコいいか?」

「えっ……?」

「天音は、俺よりアイツの方がカッコいいと思うのか?」

「く、久遠く……」

「アイツのことが好きなのか?なぁちがうよな」

く、久遠くん、なんかおかしい……。

「……天音」

「あっ、れ、蓮くん!!」

蓮くんは無表情で私たちを見つめている。

ううっ……は、恥ずかしい。

私は慌てて久遠くんの胸を押した。

そして、蓮くんに駆け寄って行く。

「ど、どうしたの、蓮くんっ……!」

「久しぶりに、天音の髪の毛結びたい」

「あっ、い、いいよ!」

蓮くんの将来の夢は美容師さんだ。

そのため、よく私の髪を切ったり結んだりしてくれている。

「あっでも、ちょっと待ってね、みんなのケーキ用意したらいいよ」

「わかった。運ぶの手伝う。」

「ふふっ、ありがとう」


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