今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「俺は父さんのところに行ってくる」

そう言いながらふかふかなソファに私を寝転がす久遠くん。

そして、ふかふかで高そうな毛布をかけてくれた。

「大人しくしてろ」

「う、うんっ……ありがとう……?」

「ん」

優しい笑みを浮かべた久遠くんは私の頭を優しく撫でて、部屋を出て行ってしまった。


「……なにをしよう……」

特にすることもなく、ボーッとソファに埋もれてる。

本当は授業に出たい。

やっと正気を取り戻したようだから。

でも、ここから勝手に出たらと考えると、なにか嫌な予感がして止まなかったのだ。



……それから30分後……。

私はスマホをポチポチといじったりして、ついにボーッとしていると、ガチャッと教室のドアが開いた。

「あっ……久遠く……ん……?」

ドアが開き、そこに立ってみたのは……。

久遠くんに似ていて、でもちがう、誰かだった。

「あ、あのっ……」

「ははっ、すまないすまない。私は上杉永遠、久遠の父親だよ」

「えっ!?」

くくく、くくっ久遠くんの、お父さん!?

「え、えっと……」

「キミが日向天音ちゃんだね」

「あっ、はいっ……!!」

知ってくれてるなんて、嬉しいなっ……!
< 74 / 257 >

この作品をシェア

pagetop