今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
「あ、ありがとう、ございます……!」
……大きくなったわね……?
もしかして、会ったことあるのかな……?
うーん……こんなに美人な人、どこかで見たことあると思うんだよなぁ……。
久遠くんのお母さん、奥様は久遠くんと同じ金色に近いベージュの髪の毛の色をしている。
その上……大人の色気を兼ね備えた、二十代後半の方に見えてしまう……。
ど、どんだけ美人なんだこの人……!!
「……それで、久遠との婚約のことなんだけど……」
「……?こ、婚約、ですか……?」
あ、あれ……?恋人役をするんじゃなかったっけ……?
「?もう天音ちゃんのお母さん、天乃ちゃんとお父さんの、尊さんからも印鑑を押してもらってるわよ」
「……へ?」
婚約の契約書のようなものに、たしかにふたりが書いた名前と日向という印が押してあった。
「い、いや、ええっ……」
どうすればいいかわからなくて久遠くんの方を見る。
「……天音はいいって言ってた」
「う、嘘……!?」
すると久遠くんがスマホを取り出し、ある動画を見せてきた。
『んへへっ……久遠くん……しゅきっ……』
『じゃあ、俺と結婚してくれるの?』
『うんっ……!久遠くんのお嫁しゃんになる〜』
……しにたい。